楽園の炎
その夜、部屋に戻った炎駒は、桂枝の前で疲れたように、目頭を揉んでいた。
「朱夏の様子はどうだ?」
「夕刻にお出ししたお茶に、アルが鎮静作用のある薬草を入れてくれたようで。それが効いているのでしょう。ようやく、お眠りに」
頷き、椅子に深く身体を沈めて、炎駒は大きくため息をついた。
桂枝が用意したグラスに、琥珀色の強い酒を注ぎ、一口含むと、炎駒はまた一つため息をつく。
「あの商人のことを調べてみたが・・・・・・。市の商人のことなど、とてもわかるものではないな。ずっといたわけでもないから、なおさらだ。市は入れ替わりが激しいしな。特に問題を起こしたわけでもないし、金の支払いなども、問題ない。結局、何もわからん」
「朱夏様も、よくは知らないようです。ただ・・・・・・」
言いよどむ桂枝に、炎駒は顔を向ける。
炎駒の視線を受け、桂枝は小さく言った。
「・・・・・・とても大事に、想っています」
炎駒の目が、僅かに見開かれた。
「あの商人が、葵王様を殺そうとしたわけではないのなら、朱夏様を助けるためとはいえ、一介の商人が、王族を殴り倒せるものでしょうか」
桂枝の言葉に、炎駒も考えるように目を伏せる。
しかし、いくら考えたところで、炎駒にも桂枝にも、何もわからない。
炎駒は、力なく首を振った。
「朱夏の様子はどうだ?」
「夕刻にお出ししたお茶に、アルが鎮静作用のある薬草を入れてくれたようで。それが効いているのでしょう。ようやく、お眠りに」
頷き、椅子に深く身体を沈めて、炎駒は大きくため息をついた。
桂枝が用意したグラスに、琥珀色の強い酒を注ぎ、一口含むと、炎駒はまた一つため息をつく。
「あの商人のことを調べてみたが・・・・・・。市の商人のことなど、とてもわかるものではないな。ずっといたわけでもないから、なおさらだ。市は入れ替わりが激しいしな。特に問題を起こしたわけでもないし、金の支払いなども、問題ない。結局、何もわからん」
「朱夏様も、よくは知らないようです。ただ・・・・・・」
言いよどむ桂枝に、炎駒は顔を向ける。
炎駒の視線を受け、桂枝は小さく言った。
「・・・・・・とても大事に、想っています」
炎駒の目が、僅かに見開かれた。
「あの商人が、葵王様を殺そうとしたわけではないのなら、朱夏様を助けるためとはいえ、一介の商人が、王族を殴り倒せるものでしょうか」
桂枝の言葉に、炎駒も考えるように目を伏せる。
しかし、いくら考えたところで、炎駒にも桂枝にも、何もわからない。
炎駒は、力なく首を振った。