楽園の炎
「きゃーっ! いっ痛いっ!! 何これ、いつの間にーっ!」
「ナ、ナスル姫様。落ち着いて。ただの火傷ですよ。小さいし、大したことないですから、大丈夫ですって」
「だって、今までは気づかなかったんだもの~。わたくし、傷って見ちゃうと駄目なのよぅ。痛い~~」
うわぁん、と傷を押さえて泣き出すナスル姫を、朱夏はおろおろと宥めた。
と、憂杏が立ち上がり、姫の手を取ると、傷の具合を見る。
「この程度の火傷なら、庭に生えてる薬草で、すぐに治るぜ」
そう呟くと、ひょいとナスル姫を抱き上げ、台所を出て行く。
扉をくぐる前に振り向き、顎で机の大皿を指して言った。
「その菓子、ナスル姫がお前のために作ったんだが、俺の分も、置いておけよ」
ぽかんと憂杏が出て行った後を見送っていた朱夏は、改めて台所の中を見渡した。
粉でもぶちまけたのだろうか。
床は一面真っ白だ。
そんなもの、使わないだろうというものも汚れているし、流しの中には、卵がいくつか割れている。
菓子の上にでも乗せようとしたのか、何種類かのフルーツが、残念なことになって、その辺に転がっている。
朱夏は机の下に転がっていたライチを拾い上げた。
ナスル姫が机の下にいたのは、転がしたライチを拾っていたのだろう。
自然に朱夏の唇が綻んだ。
憂杏とナスル姫の気遣いが、嬉しかった。
「ナ、ナスル姫様。落ち着いて。ただの火傷ですよ。小さいし、大したことないですから、大丈夫ですって」
「だって、今までは気づかなかったんだもの~。わたくし、傷って見ちゃうと駄目なのよぅ。痛い~~」
うわぁん、と傷を押さえて泣き出すナスル姫を、朱夏はおろおろと宥めた。
と、憂杏が立ち上がり、姫の手を取ると、傷の具合を見る。
「この程度の火傷なら、庭に生えてる薬草で、すぐに治るぜ」
そう呟くと、ひょいとナスル姫を抱き上げ、台所を出て行く。
扉をくぐる前に振り向き、顎で机の大皿を指して言った。
「その菓子、ナスル姫がお前のために作ったんだが、俺の分も、置いておけよ」
ぽかんと憂杏が出て行った後を見送っていた朱夏は、改めて台所の中を見渡した。
粉でもぶちまけたのだろうか。
床は一面真っ白だ。
そんなもの、使わないだろうというものも汚れているし、流しの中には、卵がいくつか割れている。
菓子の上にでも乗せようとしたのか、何種類かのフルーツが、残念なことになって、その辺に転がっている。
朱夏は机の下に転がっていたライチを拾い上げた。
ナスル姫が机の下にいたのは、転がしたライチを拾っていたのだろう。
自然に朱夏の唇が綻んだ。
憂杏とナスル姫の気遣いが、嬉しかった。