楽園の炎
「・・・・・・そう思う相手が、儚くなってしまうのは、耐えられるものなのですか?」
炎駒は顔を上げた。
じっと見ている朱夏の目に、涙が浮かんでいる。
炎駒は、朱夏が何のことを言っているのかを悟った。
「何だかんだいっても、耐えられるものだよ。もちろん、己の世界が終わってしまう程に、悲しいがね。だが私には、お前がいた。母上が遺してくれた、唯一にして最高の宝物だ」
俯いた朱夏の膝に、ぽたぽたと涙が落ちる。
炎駒は手を伸ばして、娘の頭を撫でた。
「お前は、そんなにあの商人を想っているのか?」
優しく言う炎駒の声には、若干の困惑が混じっている。
朱夏は首を傾げるようにして、顔を上げた。
「わかりません。でも、父上の仰る気持ちは、あたしがユウに感じた気持ちと同じです。桂枝も、あたしの気持ちは愛だって。だけどもしかしたら、すでに遅いかもしれないじゃないですか。何も手元に遺らない場合は、どうやってユウを失った悲しみに耐えればいいんですか?」
半ば気づいていたとはいえ、炎駒は驚きを隠せなかった。
と同時に、今までこういうことに無縁だった娘が、初めての恋でいきなり相手と死に別れるということに、不安になる。
「せめて、あの者の素性がわかればな・・・・・・」
炎駒は朱夏の頭を撫でてやることしかできなかった。
炎駒は顔を上げた。
じっと見ている朱夏の目に、涙が浮かんでいる。
炎駒は、朱夏が何のことを言っているのかを悟った。
「何だかんだいっても、耐えられるものだよ。もちろん、己の世界が終わってしまう程に、悲しいがね。だが私には、お前がいた。母上が遺してくれた、唯一にして最高の宝物だ」
俯いた朱夏の膝に、ぽたぽたと涙が落ちる。
炎駒は手を伸ばして、娘の頭を撫でた。
「お前は、そんなにあの商人を想っているのか?」
優しく言う炎駒の声には、若干の困惑が混じっている。
朱夏は首を傾げるようにして、顔を上げた。
「わかりません。でも、父上の仰る気持ちは、あたしがユウに感じた気持ちと同じです。桂枝も、あたしの気持ちは愛だって。だけどもしかしたら、すでに遅いかもしれないじゃないですか。何も手元に遺らない場合は、どうやってユウを失った悲しみに耐えればいいんですか?」
半ば気づいていたとはいえ、炎駒は驚きを隠せなかった。
と同時に、今までこういうことに無縁だった娘が、初めての恋でいきなり相手と死に別れるということに、不安になる。
「せめて、あの者の素性がわかればな・・・・・・」
炎駒は朱夏の頭を撫でてやることしかできなかった。