楽園の炎
互いに礼をし、剣先を合わせる。

葵はゆっくり、間合いを取る。
朱夏が自分から飛び込んでくるのに、躊躇いがあるのを見越しているようで、朱夏は悔しくなった。

---あたしはそんなに、弱くないんだからっ!---

心の中で叫び、朱夏は足を踏み出した。
一気に葵との間合いを詰める。
正面から斬りつけるように見せて、一瞬のうちに剣を下げる。

下から斬り上げようとする朱夏の剣を、葵は間一髪防いだ。
葵の剣に弾かれて、朱夏の剣が、大きく持って行かれる。
その隙に、葵は朱夏の胸を裂くように、剣を振るう。
思い切り後ろに飛び退った朱夏を、さらに葵が追い詰める。

何歩か後ろに飛び退っていた朱夏だが、一旦低く沈むと、顔の前で剣を構え、そのまま地を蹴った。
葵の首筋を目指す。
葵が縦に剣を構え直し、後退する。

さらに踏み込んだ朱夏の剣と葵の剣が、がきんと打ち合った。
ぎぎぎ、と、そのまま剣の押し合いになる。
が、力ではやはり、朱夏のほうが不利だ。
次第に押される朱夏に、剣の向こうから、葵が少し意地悪く笑った。

「力では、やっぱり僕には敵わないね」

呟き、一気に片を付けようと、葵は剣に力を込める。
だが次の瞬間、動きを止めた。

剣の向こうから見上げる朱夏の鋭い瞳に、物凄い殺気が宿っていたのだ。
冷水を浴びたように、背筋が寒くなる。

葵が殺気に呑まれた一瞬を逃さず、朱夏は素早く葵の足を払った。

「うわっ!」

不意を突かれて、葵が横に転がる。
朱夏は転がった葵の、剣を持ったほうの手首を踏みつけ、首のすぐ横に、だん! と剣を突き刺した。
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