楽園の炎
庭の小さな泉の前で、朱夏は立ち止まり、その場に座って振り返った。
葵が横に座ると、朱夏はミードの瓶を取り上げ、葵の腕を掴んで泉の中に突っ込んだ。
汚れた傷口を、ごしごしと洗う。
「・・・・・・もしかして朱夏。この後ミードを、僕に擦りつける気じゃないだろうね?」
「あら。ばれちゃった?」
にやりと笑う朱夏に、葵は手を引っ込めた。
「全く、この歳になって、まだミードの盗み食いなんて」
言いつつも、葵は瓶の蓋を開けた。
独特の香りが広がる。
「あ! 当たりだ! 栗のミードよ!」
嬉しそうに言う朱夏に、葵は瓶を渡した。
「僕にとっては、外れだよ。・・・・・・朱夏は、変わらないねぇ」
傷は大丈夫なの? と言う朱夏から手首を隠しながら、葵がしみじみと言う。
ミードを塗りつけられるのが、よっぽど嫌らしい。
「そうね。何にも変わってないんだと思う。葵への、気持ちもね」
泉を眺めながら言う朱夏の横顔を、葵は見つめた。
変わらないとは言ったが、葵の目には、ここ最近で、朱夏はぐっと綺麗になったように思う。
「あたしは葵のこと、ほんとに好きだったよ。今でも、変わらないよ。でも、どうもそれは、愛しいっていうんじゃないみたい」
「・・・・・・人事みたいな言い方だね」
不思議と穏やかな気持ちで、葵は呟いた。
葵が横に座ると、朱夏はミードの瓶を取り上げ、葵の腕を掴んで泉の中に突っ込んだ。
汚れた傷口を、ごしごしと洗う。
「・・・・・・もしかして朱夏。この後ミードを、僕に擦りつける気じゃないだろうね?」
「あら。ばれちゃった?」
にやりと笑う朱夏に、葵は手を引っ込めた。
「全く、この歳になって、まだミードの盗み食いなんて」
言いつつも、葵は瓶の蓋を開けた。
独特の香りが広がる。
「あ! 当たりだ! 栗のミードよ!」
嬉しそうに言う朱夏に、葵は瓶を渡した。
「僕にとっては、外れだよ。・・・・・・朱夏は、変わらないねぇ」
傷は大丈夫なの? と言う朱夏から手首を隠しながら、葵がしみじみと言う。
ミードを塗りつけられるのが、よっぽど嫌らしい。
「そうね。何にも変わってないんだと思う。葵への、気持ちもね」
泉を眺めながら言う朱夏の横顔を、葵は見つめた。
変わらないとは言ったが、葵の目には、ここ最近で、朱夏はぐっと綺麗になったように思う。
「あたしは葵のこと、ほんとに好きだったよ。今でも、変わらないよ。でも、どうもそれは、愛しいっていうんじゃないみたい」
「・・・・・・人事みたいな言い方だね」
不思議と穏やかな気持ちで、葵は呟いた。