楽園の炎
しばらく震えが治まらなかった朱夏は、かなり経ってから、宝瓶宮に帰った。
やっと元気を取り戻した朱夏が、また真っ青になって帰ってきたのを見て、桂枝は慌てた。
急ぎ言わねばならないことがあるのだが、朱夏の様子に躊躇する。
「まぁ、どうしました。とりあえず、お座りください」
寝台に座らせ、お茶を用意する。
ちらちらと朱夏の様子を窺っていたが、桂枝は、やはり言わねば、と口を開いた。
「朱夏様。今、神殿で会議が行われております」
桂枝の言葉に、朱夏が勢い良く顔を上げた。
神殿での会議---裁判だ。
桂枝が頷く。
朱夏は口を開いたが、言葉が出てこない。
ただ、ふるふると首を振った。
崩れ落ちそうになる朱夏を支える桂枝に縋っていた朱夏が、何か閃いたように、立ち上がろうとした。
「・・・・・・そうだ、ナスル姫・・・・・・。ナスル姫様は?」
ナスル姫は、宗主国の皇女だ。
ククルカン皇帝溺愛だという。
ナスル姫なら、裁判を止めることもできるのではないか。
だが、桂枝が朱夏を押し留めた。
「朱夏様、落ち着いて。ナスル姫様は、憂杏と市に出かけております」
「市? いいわよ。すぐに行く!」
桂枝を押しのけるように、朱夏は扉に駆け寄った。
その扉が、朱夏が手をかける前に、外側から開く。
驚いた朱夏の前に、炎駒が立っていた。
「ち、父上・・・・・・」
一の側近である炎駒抜きに、重要な会議を進めることなど、あり得ない。
炎駒がここにいること即ち、会議が終わったことを意味する。
やっと元気を取り戻した朱夏が、また真っ青になって帰ってきたのを見て、桂枝は慌てた。
急ぎ言わねばならないことがあるのだが、朱夏の様子に躊躇する。
「まぁ、どうしました。とりあえず、お座りください」
寝台に座らせ、お茶を用意する。
ちらちらと朱夏の様子を窺っていたが、桂枝は、やはり言わねば、と口を開いた。
「朱夏様。今、神殿で会議が行われております」
桂枝の言葉に、朱夏が勢い良く顔を上げた。
神殿での会議---裁判だ。
桂枝が頷く。
朱夏は口を開いたが、言葉が出てこない。
ただ、ふるふると首を振った。
崩れ落ちそうになる朱夏を支える桂枝に縋っていた朱夏が、何か閃いたように、立ち上がろうとした。
「・・・・・・そうだ、ナスル姫・・・・・・。ナスル姫様は?」
ナスル姫は、宗主国の皇女だ。
ククルカン皇帝溺愛だという。
ナスル姫なら、裁判を止めることもできるのではないか。
だが、桂枝が朱夏を押し留めた。
「朱夏様、落ち着いて。ナスル姫様は、憂杏と市に出かけております」
「市? いいわよ。すぐに行く!」
桂枝を押しのけるように、朱夏は扉に駆け寄った。
その扉が、朱夏が手をかける前に、外側から開く。
驚いた朱夏の前に、炎駒が立っていた。
「ち、父上・・・・・・」
一の側近である炎駒抜きに、重要な会議を進めることなど、あり得ない。
炎駒がここにいること即ち、会議が終わったことを意味する。