楽園の炎
「ご不快の種に関することですわ」

皇太子の眉が、ぴくりと反応する。
ちらりとナスル姫を見、皇太子は皆を見渡した。

「皆、さがるがよい。アルファルド王にも、急な到着になって、申し訳ない。今日のところは、私のことは気にしないで良い故、気を遣うことはないぞ。私も疲れた。簡単な食事だけ頼む。全ては、明日にしよう」

手を振って皆をさがらせようとする皇太子に、炎駒が思わず声を上げた。

「お待ちを。お疲れのところ、申し訳ありませぬが、明日はこちらの葵王様に関する、大きな裁判があります。是非、皇太子殿下のご判断を仰ぎとうございます」

皇太子は炎駒を見下ろし、ああ、と頷いた。

「葵王暗殺未遂とかいうやつだな? 確かに大きな事件だが・・・・・・。そのような大事件を、独自に裁いたのか?」

ちらりと皇太子が、葵を見る。
葵は膝を付き、臆することなく答えた。

「申し訳ございません。本来は、ククルカン皇家にお知らせして裁可を仰ぐべきですが、皇太子殿下が近く来られるというこの時期に、そのような大罪人を置いておくのは、殿下の御身に危害が及ぶ可能性あり、と見、早急に裁くよう、手配致しました」

葵の言葉に、皇太子もふむ、と頷く。
炎駒は黙ったまま、拳を握りしめた。
嫌な予感がする。
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