楽園の炎
少し笑って、皇太子は侍女が食事と共に運んできた杯を持ち上げた。
葵の杯に、軽く合わす。
葵も微笑んで、杯を傾けた。
「さて。炎駒殿の書状には、急ぎその者の、再度の裁可を、ということだったが。王太子暗殺という大事件だ。未遂とはいえ、死罪だろう? 何か、不満でもあるのか?」
皇太子の話を受け、炎駒は身を乗り出した。
「いいえ。不満など、ございません。我がアルファルドの、唯一のお世継ぎを害そうなどと考える者は、もちろん死罪にすべきです。ですが今回のことは、果たして葵王様暗殺が目的だったのか、という疑問があるのです。もし真意が他にあるのなら、その真意を調べずして死罪にしてしまうのは、あまりに早計ではありませぬか?」
ほぅ? と、皇太子が杯を置く。
「王太子暗殺ではない、と思う根拠は?」
炎駒は、葵に顔を向けた。
「あの者は、もしかすると、朱夏が目的だったのではないですか?」
葵の目が見開かれる。
夜這いのことを、言うつもりはない。
ナスル姫もいることだし、葵のためにもならない。
だが、朱夏も傍にいたという事実だけなら、皆知っているし、話しても問題ないだろう。
「朱夏とは?」
皇太子の質問に、ナスル姫が、何故かちょっとはしゃいだように答えた。
「葵王様の、お付き武官よ。炎駒様の娘さんね。とってもお強いのよ」
葵の杯に、軽く合わす。
葵も微笑んで、杯を傾けた。
「さて。炎駒殿の書状には、急ぎその者の、再度の裁可を、ということだったが。王太子暗殺という大事件だ。未遂とはいえ、死罪だろう? 何か、不満でもあるのか?」
皇太子の話を受け、炎駒は身を乗り出した。
「いいえ。不満など、ございません。我がアルファルドの、唯一のお世継ぎを害そうなどと考える者は、もちろん死罪にすべきです。ですが今回のことは、果たして葵王様暗殺が目的だったのか、という疑問があるのです。もし真意が他にあるのなら、その真意を調べずして死罪にしてしまうのは、あまりに早計ではありませぬか?」
ほぅ? と、皇太子が杯を置く。
「王太子暗殺ではない、と思う根拠は?」
炎駒は、葵に顔を向けた。
「あの者は、もしかすると、朱夏が目的だったのではないですか?」
葵の目が見開かれる。
夜這いのことを、言うつもりはない。
ナスル姫もいることだし、葵のためにもならない。
だが、朱夏も傍にいたという事実だけなら、皆知っているし、話しても問題ないだろう。
「朱夏とは?」
皇太子の質問に、ナスル姫が、何故かちょっとはしゃいだように答えた。
「葵王様の、お付き武官よ。炎駒様の娘さんね。とってもお強いのよ」