楽園の炎
「えらく大袈裟になったもんだな。別に俺は、葵王を殺すつもりも、朱夏を誘拐するつもりもなかったぜ。ただ、葵王を殴ったのと、朱夏をその場から連れ出したのは事実だ。それが不敬罪にあたることも、理解している。殺すつもりはなかったが、殺しそうになったのも事実だしな」

このような場に引き出されても、全く動じることなく、いつもと同じ口調で言い放つユウに、誰もが耳を疑う。

重臣の居並ぶこの場で、王も王太子も関係なく、しかも己が有利になるわけでもない事柄を、淡々と述べる商人。
すでに死を覚悟しているから、開き直っているのかとも思うが、この堂々とした態度は何だろう。

誰もがそう思い、ユウを見つめた。

神官が、少し困惑した表情になり、アルファルド王を見た。
王もユウの態度に驚いていたが、生憎王が意見を仰ぐべきククルカン皇太子は、裁判には顔を出していない。
少し王と言葉を交わした後、神官はユウに向き直った。

「では、最終的な裁可は、今のお前の言葉を踏まえて、よく考えよう。だが、あまり期待はできないと思え。今のお前の言葉は、己の罪を認めたも同然だということを忘れるな」

「期待など、端(はな)からしとらんよ」

相変わらず尊大なユウに、神官は顔を引き攣らせながらも、一旦神殿の中に姿を消した。

朱夏はゆっくりと、ざわつく神殿から抜け出した。
足が震える。
どうにか外宮の回廊まで行き、耐えられなくなってへたり込んだ。

折角頑張って食べた朝餉が、胃の中で暴れ回る。
手に刃が食い込むのも構わず、朱夏は首から下げた短剣を握りしめて、蹲った。
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