楽園の炎
「もちろんよ!」
ナスル姫は叫ぶと、一気に階段を駆け上がった。
慌てて朱夏も追う。
階段を上りきり、神殿に飛び込んだ朱夏の耳に、前方から神官の声が響いてきた。
「最終裁可を下す!」
息を呑んで、顔を上げる。
前を行くナスル姫の背中の向こうに、小さく神官の姿が見えた。
神官は杖を掲げ、広場に向かって声を張り上げる。
「この者を、処刑に---」
「待ちなさい!!!」
朱夏よりも早く、神殿から飛び出したナスル姫が、神官の声をかき消した。
王も葵も、皆がいきなりのナスル姫の乱入に、言葉を失って固まっている。
誰もが驚いて、神殿の正面に立つナスル姫を見ていたが、ただ一人、広場の中央で後ろ手に縛られて立っていたユウだけが、あからさまに『げっ』という顔をした。
静まり返った広場で、ナスル姫は神殿の正面階段の下に立つ、薄汚い商人を見た。
「この者には、まだ聞きたいことが・・・・・・」
息を弾ませながら言うナスル姫の言葉が、途中で途切れた。
皆、ナスル姫に釘付けになっている。
その姫は、商人に目を向けたまま、固まった。
ナスル姫は、商人に据えた目を驚きに見開くと、おもむろに大きく息を吸い込んだ。
一人、今まで落ち着き払っていたユウだけが、やけにわたわたと慌てている。
ナスル姫が両手をぎゅっと握りしめるに至って、ユウは肩を竦めて、きつく目を瞑る。
その瞬間、小さなアルファルド国中に響き渡るかと思うほどの大声が、ナスル姫の口から飛び出した。
「お兄様ぁっ!! 何やってるんですかぁぁっっ!!!!」
この声を聞きつけて、皇太子が飛んできたのは、言うまでもない。
ナスル姫は叫ぶと、一気に階段を駆け上がった。
慌てて朱夏も追う。
階段を上りきり、神殿に飛び込んだ朱夏の耳に、前方から神官の声が響いてきた。
「最終裁可を下す!」
息を呑んで、顔を上げる。
前を行くナスル姫の背中の向こうに、小さく神官の姿が見えた。
神官は杖を掲げ、広場に向かって声を張り上げる。
「この者を、処刑に---」
「待ちなさい!!!」
朱夏よりも早く、神殿から飛び出したナスル姫が、神官の声をかき消した。
王も葵も、皆がいきなりのナスル姫の乱入に、言葉を失って固まっている。
誰もが驚いて、神殿の正面に立つナスル姫を見ていたが、ただ一人、広場の中央で後ろ手に縛られて立っていたユウだけが、あからさまに『げっ』という顔をした。
静まり返った広場で、ナスル姫は神殿の正面階段の下に立つ、薄汚い商人を見た。
「この者には、まだ聞きたいことが・・・・・・」
息を弾ませながら言うナスル姫の言葉が、途中で途切れた。
皆、ナスル姫に釘付けになっている。
その姫は、商人に目を向けたまま、固まった。
ナスル姫は、商人に据えた目を驚きに見開くと、おもむろに大きく息を吸い込んだ。
一人、今まで落ち着き払っていたユウだけが、やけにわたわたと慌てている。
ナスル姫が両手をぎゅっと握りしめるに至って、ユウは肩を竦めて、きつく目を瞑る。
その瞬間、小さなアルファルド国中に響き渡るかと思うほどの大声が、ナスル姫の口から飛び出した。
「お兄様ぁっ!! 何やってるんですかぁぁっっ!!!!」
この声を聞きつけて、皇太子が飛んできたのは、言うまでもない。