楽園の炎
第十一章
「ねぇ朱夏。朱夏はお兄様と、いつからあんなに親しくなったの? お兄様も朱夏のこと、尋常じゃなく想ってるみたいだし、いつの間にお心を通わせていたのかしら」
皇太子の部屋で席に着くなり、ナスル姫が朱夏のほうに身を乗り出した。
「ああっ朱夏とお兄様がご結婚となれば、朱夏はわたくしのお姉様ね! 素敵だわ!」
きらきらと目を輝かせて言うナスル姫に、朱夏が赤くなって困っていると、皇太子が姫を窘(たしな)めた。
「ナスル、ちょっと黙りなさい。そのようなことを、このような場で言うものではない」
「あら。兄上は、お堅すぎますのよ。大事なことよ。お兄様にこれほど大事に想うかたができたのは、お兄様のおためにもなりますわ」
つん、と澄まして言うナスル姫の言葉を聞いていた朱夏は、姫の兄の呼び方の違いに気づいた。
皇太子のことは『兄上』、夕星のことは『お兄様』。
夕星が三男で、ナスル姫が一番下ということは、ナスル姫のすぐ上が、夕星ということになるはずだ。
第一皇女は、皇太子よりも年上だからだ。
だからだろうか、と思っていると、再びナスル姫が、朱夏に話を振った。
「ね、朱夏もお兄様のこと、お好きなのでしょ?」
「あ、あの。それは・・・・・・」
もごもごと口ごもる朱夏に、皇太子がこれ、とナスル姫の頭を軽く叩く。
そのとき、不意に朱夏の横から、葵が口を挟んだ。
「お待ちを。それよりも私が気になるのは、夕星殿の行動です。皇太子様も仰っていた、‘死に急ぐ’とは、どういうことです」
皇太子の部屋で席に着くなり、ナスル姫が朱夏のほうに身を乗り出した。
「ああっ朱夏とお兄様がご結婚となれば、朱夏はわたくしのお姉様ね! 素敵だわ!」
きらきらと目を輝かせて言うナスル姫に、朱夏が赤くなって困っていると、皇太子が姫を窘(たしな)めた。
「ナスル、ちょっと黙りなさい。そのようなことを、このような場で言うものではない」
「あら。兄上は、お堅すぎますのよ。大事なことよ。お兄様にこれほど大事に想うかたができたのは、お兄様のおためにもなりますわ」
つん、と澄まして言うナスル姫の言葉を聞いていた朱夏は、姫の兄の呼び方の違いに気づいた。
皇太子のことは『兄上』、夕星のことは『お兄様』。
夕星が三男で、ナスル姫が一番下ということは、ナスル姫のすぐ上が、夕星ということになるはずだ。
第一皇女は、皇太子よりも年上だからだ。
だからだろうか、と思っていると、再びナスル姫が、朱夏に話を振った。
「ね、朱夏もお兄様のこと、お好きなのでしょ?」
「あ、あの。それは・・・・・・」
もごもごと口ごもる朱夏に、皇太子がこれ、とナスル姫の頭を軽く叩く。
そのとき、不意に朱夏の横から、葵が口を挟んだ。
「お待ちを。それよりも私が気になるのは、夕星殿の行動です。皇太子様も仰っていた、‘死に急ぐ’とは、どういうことです」