楽園の炎
桂枝は、ずいっと朱夏に近づくと、ふんふんと鼻を鳴らした。
「おや、お珍しい。アボカドも、お召しになられたのですか。あれは、あまりお好きじゃないでしょう」
うう、と冷や汗を流しながら、朱夏はじりじりと後退する。
侍女頭であるだけに、怒らせたら怖いのだ。
今や朱夏を遠慮無く叱り飛ばすのは、この桂枝ぐらいなものだが。
「ア、アボカドなんて、よくわかったわね。匂いも特に、ないと思うけど」
「わたくしにわからぬことなど、ありません。食べ過ぎるのはいただけませんが、食べるなとも申しませぬよ。でも、お衣装を汚すのは、いい大人なのですから注意していただきたいものですわね。果汁は、落ちにくいのですよ」
言われて視線を落とすと、確かに朱夏の衣装には、ぽつぽつと染みがついていた。
諦め、朱夏は頭を垂れた。
「ごめんなさい」
「ま、朱夏様のお衣装は、リンズとも呼べないものですものね。でも、こういうときは、返って助かりますわ」
素直に謝った朱夏に、今度こそにっこりと笑いかけ、桂枝は朱夏を部屋に促した。
ついでに、朱夏の部屋に入れるのも、桂枝とアルだけだ。
というのも、朱夏の部屋の入り口には、妙な仕掛けが施してあるのだ。
「おや、お珍しい。アボカドも、お召しになられたのですか。あれは、あまりお好きじゃないでしょう」
うう、と冷や汗を流しながら、朱夏はじりじりと後退する。
侍女頭であるだけに、怒らせたら怖いのだ。
今や朱夏を遠慮無く叱り飛ばすのは、この桂枝ぐらいなものだが。
「ア、アボカドなんて、よくわかったわね。匂いも特に、ないと思うけど」
「わたくしにわからぬことなど、ありません。食べ過ぎるのはいただけませんが、食べるなとも申しませぬよ。でも、お衣装を汚すのは、いい大人なのですから注意していただきたいものですわね。果汁は、落ちにくいのですよ」
言われて視線を落とすと、確かに朱夏の衣装には、ぽつぽつと染みがついていた。
諦め、朱夏は頭を垂れた。
「ごめんなさい」
「ま、朱夏様のお衣装は、リンズとも呼べないものですものね。でも、こういうときは、返って助かりますわ」
素直に謝った朱夏に、今度こそにっこりと笑いかけ、桂枝は朱夏を部屋に促した。
ついでに、朱夏の部屋に入れるのも、桂枝とアルだけだ。
というのも、朱夏の部屋の入り口には、妙な仕掛けが施してあるのだ。