楽園の炎
「違うの? お花を乾燥させればいいと思ってたんだけど」

「え、これ、ナスル姫様が作ったのですか?」

毒々しいお茶を指して言う朱夏に、ナスル姫は得意げに胸を反らせた。

「凄いでしょ。このお菓子も作ったのよ。随分上達したと思わない?」

言われてみれば、籠に盛られた焼き菓子は、以前台所でえらいことになっていたものと同じもののようだが、随分と一番初めに出された、いうなればお手本に近づいている。

「へぇ。凄いですね」

これなら、食べるのに勇気はいらない。
朱夏は焼き菓子を口に入れた。

「・・・・・・美味しい」

「ほんとっ?」

ぱっとナスル姫が、笑顔になる。
朱夏はうんうんと頷きながら、もう一つ焼き菓子を手に取った。

「うん。本当に美味しいです。これなら、葵王にあげても、全然大丈夫ですよ」

やったぁ、と喜ぶナスル姫だったが、すぐにちょっと思案顔になる。
カップを持ったまま、朱夏をじっと見た。

「ねぇ。朱夏はさ、葵王様と、仲良いわよね。葵王様から、お見合いのこととか、何か聞いてる?」

ん~、と朱夏は、焼き菓子を咀嚼しながら考えた。
聞いているというか、確かに昨日、お見合いの話はしたが。
ナスル姫が、それに関する何を聞きたいのかがわからず、朱夏は口ごもった。
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