楽園の炎
まず夕星に相談しようかなぁ、と考えながら、外宮の廊下を歩いていた朱夏は、中庭で兵士らと談笑する憂杏を見つけた。
まだ若い少年兵が、一心に細い筒を覗き込んでいる。

他の兵士と喋っていた憂杏が、朱夏に気づいて片手を挙げた。

「何やってるの?」

庭に降りて、憂杏に歩み寄りながら、朱夏はまじまじと彼を見上げた。

不細工ではないが、美男子でもない。
よく日焼けし、がっしりとした大きな身体は、兵士らの中にいても、見劣りしない。

が、間違っても‘上品’ではない。
生まれは良いのだから、小綺麗にすれば、それなりに見えるのだろうか。

やはり、うう~む、と頭を抱えてしまう。
小さいときからの付き合いだが、野生児の憂杏しか知らないのだ。

「何だ? 何か、ついてるか?」

憂杏が、己の頬を撫でる。
朱夏は一つ、はぁ、と息をつくと、少年兵が持っている筒に目をやった。

「なぁに? これ」

朱夏がひょい、と少年の前に立つ。
すると少年は、ぱっと片目で覗いていた筒から顔を離した。

「駄目ですよ。前に立つと、見えなくなります」

「?」
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