楽園の炎
「朱夏殿」
夕星を捜して内宮を歩いていた朱夏は、不意にかけられた声に振り向き、慌ててその場に膝を付いた。
皇太子が、こちらに歩いてくる。
「良い良い。そんなにかしこまらないでおくれ。あなたは私の、妹になるかたなのだから」
さらりと言い、皇太子は朱夏の前で立ち止まると、手を取って朱夏を立ち上がらせた。
「あなたはナスルと、親しくしてくれているとか。葵王殿とも、兄妹のようなものだと言っていたね。ちょっと相談があるんだが」
あ、と朱夏は、すぐに何のことだか、想像がついた。
その上で、困ってしまった。
まだ夕星に相談していないし、夕星が駄目なら、葵にしようと思っていた。
まさか全く頭になかった、皇太子殿下に呼び止められるとは。
皇太子に促され、後について歩きながら、朱夏はそっと皇太子を窺った。
皇太子に相談してみようかとも思うが、いまいちどういう人なのかがわからない。
夕星の兄弟なのだから、フランクな人柄なのかもしれないが、母が違うのだ。
肌の色は似ているが、顔立ちは違う。
性格も、全く違うのかもしれない。
ナスル姫も、『お堅い』と言っていたし・・・・・・などと考えているうちに、皇太子が使っている部屋についた。
「どうぞ。お茶でも淹れさそう」
皇太子が、扉を開けてくれた。
朱夏は一礼し、扉をくぐる。
中にいた何人かの侍女が、平伏して迎えた。
皇太子は一番年かさの侍女に、お茶を淹れるよう命じ、朱夏に椅子を勧めた。
夕星を捜して内宮を歩いていた朱夏は、不意にかけられた声に振り向き、慌ててその場に膝を付いた。
皇太子が、こちらに歩いてくる。
「良い良い。そんなにかしこまらないでおくれ。あなたは私の、妹になるかたなのだから」
さらりと言い、皇太子は朱夏の前で立ち止まると、手を取って朱夏を立ち上がらせた。
「あなたはナスルと、親しくしてくれているとか。葵王殿とも、兄妹のようなものだと言っていたね。ちょっと相談があるんだが」
あ、と朱夏は、すぐに何のことだか、想像がついた。
その上で、困ってしまった。
まだ夕星に相談していないし、夕星が駄目なら、葵にしようと思っていた。
まさか全く頭になかった、皇太子殿下に呼び止められるとは。
皇太子に促され、後について歩きながら、朱夏はそっと皇太子を窺った。
皇太子に相談してみようかとも思うが、いまいちどういう人なのかがわからない。
夕星の兄弟なのだから、フランクな人柄なのかもしれないが、母が違うのだ。
肌の色は似ているが、顔立ちは違う。
性格も、全く違うのかもしれない。
ナスル姫も、『お堅い』と言っていたし・・・・・・などと考えているうちに、皇太子が使っている部屋についた。
「どうぞ。お茶でも淹れさそう」
皇太子が、扉を開けてくれた。
朱夏は一礼し、扉をくぐる。
中にいた何人かの侍女が、平伏して迎えた。
皇太子は一番年かさの侍女に、お茶を淹れるよう命じ、朱夏に椅子を勧めた。