楽園の炎
「さて。朱夏殿にはここ数日、怒濤の日々だったと思うが。少しは落ち着いたかね?」

朱夏の前の長椅子に腰掛け、皇太子は朱夏の緊張を和らげるためか、柔らかく微笑んだ。
侍女が運んできたお茶の香りをかぎながら、朱夏は小さく、はい、と答える。

ふと、そういえば皇太子はいくつなんだろうという疑問が起こった。
皇帝の男子の中では一番上だが、まだ皇太子だ。
もしかして、憂杏よりも年下なのではないか?

また一つ問題が浮上し、朱夏は自然と難しい顔になった。

「おや? このお茶は、口に合わないか? 東のほうから取り寄せた、緑茶というものなのだが」

「あ、いえ。そういうわけではありません」

朱夏は慌ててカップを手に取り、くん、と香りを吸い込む。
独特の爽やかな香りが、気分を落ち着かせてくれる。

「とても良い香りです」

笑って言うと、皇太子も微笑んでカップに口を付けた。

「あのぅ・・・・・・。失礼ですが、皇太子殿下は、おいくつなのですか?」

おずおずと聞いてみると、皇太子はいきなり妙なことを聞かれたことに、僅かに首を傾げたが、特に不機嫌になる様子もなく答えた。

「二十五だ。私たち男兄弟は、ちょうど二つずつ離れている。姉上は、私の三つ上か。ナスルだけが、ぐっと離れているんだ」
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