楽園の炎
「・・・・・・気になる奴が、いるんだって?」

ぽつりと夕星が、口を開いた。
朱夏は夕星の顔を窺う。

「そう言った後で、何か言いたげにしていたが、結局何も言わなかった」

「そっか。えっとぉ、その気になる人なんだけどさ・・・・・・。何か、心当たりはある?」

もしかしたら、夕星は気づいているかも、と思い、ちらちらと窺いながら聞いてみる。
案の定、夕星は難しい顔になった。

「心当たりというか・・・・・・。あいつは、ここに来るまでは、葵王のことを想っていたわけだから、それ以降となる。ということは、ここ最近だ。思い当たる奴は、知る限り、一人しかいないんだが・・・・・・。もっとも俺は、アルファルドに入ってからは、ずっと市にいたわけだから、その間誰かと出会っていたのかもしれんがな」

「その考えられる一人って、そのぉ・・・・・・ユウもよく知る、おっさんよね?」

難しい顔のまま、夕星が頷く。
朱夏は一つ息をつき、がばっと夕星のほうへ乗り出した。

「どうする? ていうか、どうすればいいの? 憂杏は侍女頭の息子だし、父上に仕えてた桂枝の息子だから、実は身分は、そう低くないのよ。確かに頭は良いし、頼りになるわ。考えてみれば、ナスル姫の理想、ぴったりかもしれない」

朱夏の言葉に、夕星は、ううむ、と眉間に皺を刻んで唸る。
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