楽園の炎
「やっぱり、そうなのか? いやでも・・・・・・確かに朱夏の言うとおりかもしれん。葵王よりも憂杏のほうが、ナスルには合うかも、とは思うが・・・・・・。いやしかし、それにしてもだな・・・・・・」

うう~む、と夕星は、頭を抱える。
朱夏はふと、憂杏のことを思った。

「ねぇ。あたしはナスル姫様に、直接お話を伺ったから、ナスル姫様のお気持ちは確かなんだけど。憂杏は、どうなんだろう?」

夕星はまた、う~む、と首を傾げる。

「憂杏からしたら、ナスルなんて、お子様もお子様だろ? 世界を飛び回っている憂杏と、宮殿で育った姫君じゃ、知識からして違うだろうし。単純に歳だって、いくつ違うよ」

「ちょうど憂杏の、半分ね・・・・・・。でもさ、そういうところが、新鮮で可愛いかもよ?」

「憂杏が、そう思ってくれりゃいいがな。うーん、でも憂杏は、宮殿で暮らすなんて生活、我慢できないだろうなぁ。ナスルもまぁ、大人しく部屋に籠もっている奴じゃないけど。となると、ナスルが宮殿を出ることになるな」

「ナスル姫の、あの想いの強さからいったら、それぐらい、しかねないわね。でも、ナスル姫様は、皇帝陛下のお気に入りでしょ? そんなこと、許してもらえるの?」

「お気に入りだからこそ許されるか、お気に入り故に許されないか・・・・・・。わからんなぁ。ナスルの頼みなら、父上も折れそうだが。それはともかく、その前に、憂杏の気持ちだよ」

一通り相談し、二人は顔を見合わせて、同時にため息をついた。
< 220 / 811 >

この作品をシェア

pagetop