楽園の炎
日が落ちてから、朱夏はゆっくりとした足取りで、宝瓶宮への道を歩いていた。
夕星と相談したことを、ナスル姫に報告がてら、憂杏の気持ちを探る方法を相談しようか、それとも葵にも相談してみようか、などと考えを巡らせる。
「まぁ朱夏様。ちょうど、夕餉を用意するところですわ。炎駒様も、もうすぐ帰ってこられますので、ささ、先に湯浴みを済ませてしまってくださいな」
宝瓶宮の前まで来たところで、桂枝が出てきて声をかけた。
「最近剣の稽古は、されていないのですか? ご結婚が決まったので、花嫁修業に変更ですか? 毎日汗と泥にまみれて帰ってこられるよりは、よっぽど助かりますけれど」
ころころと笑いながら、桂枝は宝瓶宮の扉を開けて、アルを呼ぶ。
湯浴みの支度をアルにさせ、いそいそと朱夏の服を脱がせる桂枝を、朱夏はじっと見た。
---桂枝に、ナスル姫が憂杏に心を寄せていると言ったら、どうするだろう---
ちらりと思い、次の瞬間、頭を振って、その考えを追い出す。
桂枝には、心臓に悪すぎる。
何の前触れもなく伝えたら、どうなることやら。
「ねぇ桂枝。孫の顔とか、見たい?」
湯船に浸かりながら、何気なく香油を用意している桂枝に聞いてみる。
夕星と相談したことを、ナスル姫に報告がてら、憂杏の気持ちを探る方法を相談しようか、それとも葵にも相談してみようか、などと考えを巡らせる。
「まぁ朱夏様。ちょうど、夕餉を用意するところですわ。炎駒様も、もうすぐ帰ってこられますので、ささ、先に湯浴みを済ませてしまってくださいな」
宝瓶宮の前まで来たところで、桂枝が出てきて声をかけた。
「最近剣の稽古は、されていないのですか? ご結婚が決まったので、花嫁修業に変更ですか? 毎日汗と泥にまみれて帰ってこられるよりは、よっぽど助かりますけれど」
ころころと笑いながら、桂枝は宝瓶宮の扉を開けて、アルを呼ぶ。
湯浴みの支度をアルにさせ、いそいそと朱夏の服を脱がせる桂枝を、朱夏はじっと見た。
---桂枝に、ナスル姫が憂杏に心を寄せていると言ったら、どうするだろう---
ちらりと思い、次の瞬間、頭を振って、その考えを追い出す。
桂枝には、心臓に悪すぎる。
何の前触れもなく伝えたら、どうなることやら。
「ねぇ桂枝。孫の顔とか、見たい?」
湯船に浸かりながら、何気なく香油を用意している桂枝に聞いてみる。