楽園の炎
「あ、あの。お見舞いに来てくださったの?」

座ってはいるが、相変わらず引き上げた布団で顔を隠したままのナスル姫が、おずおずと言う。

「ああ。どうせ朱夏のところまで来たんだ。どっちにしろ、寄るつもりだったしな」

「え・・・・・・」

ぽ、と頬を染めて、ナスル姫が顔を上げる。
もっとも、熱のせいで元々顔が赤いため、あまりわからないが。

「ちょっと頑張りすぎてたからなぁ。心配だったんだよ。俺がいろいろ、けしかけたようなもんだし」

がりがりと頭を掻きながら、憂杏が照れたように言う。
一気に熱が上がったようで、ナスル姫は、ふら、と手をついた。

「おいおい。大丈夫なのか? 寝てなって」

憂杏が慌てて言う。
さすがに状況が状況なだけに、不用意には触れないが。

しかしナスル姫も、寝てろと言われても、まだそういう良い仲になっていない男の前で、布団に入るようなことはしない。
両手をついた状態で一つ息をつくと、姫は顔を上げた。

「心配してくれてたのね。嬉しいわ」

にこりと笑うナスル姫に、憂杏は決まり悪げに、がりがりと頭を掻く。

「大丈夫よ。ただの知恵熱でしょうし。いろんなことをしてみるのも、楽しいものね」

「身体、壊さない程度にしろよ」
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