楽園の炎
扉の外では、朱夏が退屈そうにしゃがみ込んでいた。

「何だよ。ユウを探しに行ったんじゃないのか」

呆れたように言う憂杏に、朱夏は顔を上げた。
笑いを堪えているような、それでいてどこか不満そうな、複雑な表情だ。
憂杏はすぐに、その意味を理解した。

「・・・・・・お前、わざと二人にしたな?」

朱夏はただ、くふふ、と笑って立ち上がった。
歩き出しながら、ちらりと扉を振り返る。

「ねぇ。ナスル姫様は、どうだった? あんまり長くはいなかったけど」

「別にどうとも。大した話もしてない。熱が高いからな、長居もできんだろ」

不機嫌そうに言いながら、憂杏はすたすたと歩く。
その後を小走りで追っていた朱夏は、いきなり立ち止まった憂杏の大きな背中に、派手にぶつかった。

「ど、どうしたのよ」

鼻を押さえながら朱夏は、憂杏の前に回った。
朱夏が思い切りぶち当たっても、大柄な憂杏はびくともしない。
ちょっと違うけど、これも頼りがいよね、と、どうでもいいことを思いながら、朱夏は憂杏を見上げる。

朱夏が訝しく思うほど、たっぷりと考えた後で、憂杏はおもむろに口を開いた。

「ユウは? 結局、会ってないのか?」

「えーと、あは。だって捜そうにも、内宮の部屋なんて、そう簡単に入れないもの」

怪しく視線を彷徨わせながら、朱夏はへらへらと笑う。
憂杏は、ごん、と朱夏の頭を叩くと、そのまま乱暴に髪をかき乱した。
おかげで朱夏の頭は、ぐしゃぐしゃになってしまう。
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