楽園の炎
「ナスルが何か、言ったのか?」

慎重に、話を進める。
憂杏は、しばらく腕組みして考えていたが、ちらりと夕星を見た。

「何か、ククルカン皇帝には、ナスル姫を国外に出そうという考えがあるのか? ナスル姫も、それを望んでいるとか?」

「ナスルが、そう言ったのか?」

いや、と呟き、憂杏は考えつつ口を開く。

「今回の見合いが潰れたことは、皇帝が自分を国外に出すチャンスを失ったことになる、みたいなことは言ってたが。あと、自身も何となく、国を出たいのかな、と取れるようなことを呟いたし・・・・・・」

夕星は少し黙っていたが、視線を空に移して、息をついた。

「父上も、心配だったんだな。・・・・・・俺と、兄上の・・・・・・アリンダのことは、聞いただろ?」

朱夏は頷いたが、憂杏はあの場にはいなかった。
が、噂程度で知っていたようだ。

「確か第二皇子の母君は、第三皇子との確執で殺されたとか、聞いたことはあるが」

「違うわよ・・・・・・」

朱夏は、ちら、と夕星を見、了解を得てから、皇太子に聞いたことを簡単に話した。
その間、夕星は黙っている。
唇を引き結んでいることから、あまり蒸し返したくないことなのだろう。

朱夏は夕星を気遣いつつ、早口に説明した。

「なるほど、そういうことが、あったのかい。ま、皇太子殿下が聡明なかたで良かったな。殿下の言うとおり、お前にゃ罪はないよ」

一通り聞いた後で、あえて軽く言いながら、憂杏は頷いた。
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