楽園の炎
「そ、そんな。自分は? 一緒に乗ってたわけじゃないの?」
馬をよく知る朱夏には、そんなことをしたらどうなるか、聞くまでもない。
夕星に聞く声が、震えてしまう。
「そんな危険なことに、自分を巻き込むわけないだろう。ナスルだけを乗っけたんだよ。短剣を突き立てられた馬は、ナスルを乗せたまま、狂ったように走り出した。最終的には、放り出されたナスルを、駆けつけた兄上・・・・・・今の、皇太子が受け止めたから、助かったんだ。だからあいつは、今でも馬に乗れない」
憂杏が、拳を握りしめる。
「そういう命に関わることでも、平気でするような奴だ。次々手込めにした女性の中には、恥として自殺した者もいるらしい。・・・・・・ナスルも年頃だ。あの鬼畜が、あいつをそういう目で見ないとも限らない」
知らず、朱夏は己を抱いていた。
葵に襲われたのを、思い出したのだ。
あんなに仲の良かった葵でも、いまだに傷が残っている。
愛でなければ、好きな相手でもこうなのだ。
好きでもない、むしろ昔からの恐怖の対象のような男に、そんなことをされたらと思うと、それだけで気が遠くなる。
「そうなる前に、国から出したほうが安全ってか。そのつもりだったんなら、今回の話は、ククルカン皇帝にとっては、この上ない良策だったわけだな。相手もお気に入りの葵だしな」
憂杏が、己を落ち着かせるように、ゆっくりとした口調で言う。
夕星は、ちょっと苦笑いをこぼした。
馬をよく知る朱夏には、そんなことをしたらどうなるか、聞くまでもない。
夕星に聞く声が、震えてしまう。
「そんな危険なことに、自分を巻き込むわけないだろう。ナスルだけを乗っけたんだよ。短剣を突き立てられた馬は、ナスルを乗せたまま、狂ったように走り出した。最終的には、放り出されたナスルを、駆けつけた兄上・・・・・・今の、皇太子が受け止めたから、助かったんだ。だからあいつは、今でも馬に乗れない」
憂杏が、拳を握りしめる。
「そういう命に関わることでも、平気でするような奴だ。次々手込めにした女性の中には、恥として自殺した者もいるらしい。・・・・・・ナスルも年頃だ。あの鬼畜が、あいつをそういう目で見ないとも限らない」
知らず、朱夏は己を抱いていた。
葵に襲われたのを、思い出したのだ。
あんなに仲の良かった葵でも、いまだに傷が残っている。
愛でなければ、好きな相手でもこうなのだ。
好きでもない、むしろ昔からの恐怖の対象のような男に、そんなことをされたらと思うと、それだけで気が遠くなる。
「そうなる前に、国から出したほうが安全ってか。そのつもりだったんなら、今回の話は、ククルカン皇帝にとっては、この上ない良策だったわけだな。相手もお気に入りの葵だしな」
憂杏が、己を落ち着かせるように、ゆっくりとした口調で言う。
夕星は、ちょっと苦笑いをこぼした。