楽園の炎
第十八章
部屋から出ながら、朱夏は考えを巡らしていた。

このままナスル姫のところに行こうか、それとも桂枝に聞いたほうがいいか。
憂杏に聞くのは、すでに夜なので、今から市に行くわけにもいかないので無理だ。

どっちにしようか、と、前を歩く夕星と皇太子を見る。

皇太子は、今からナスル姫に、明日憂杏を召す旨を伝えるかもしれない。
そのようなところにお邪魔するわけにはいかないから、やっぱり部屋にいる桂枝に聞くほうがいいかな、と思っていると、前を歩く夕星が振り向いた。

つい、と月を指し、その指を、少し先に見えている神殿の尖塔に動かす。
朱夏が小さく頷くと、夕星は顔を庭にある泉に向けた。

---月が神殿の尖塔にかかる頃、あの四阿(あずまや)ね---

もう一度、朱夏が他に気づかれないよう頷くと、夕星は元のように前を向いて、皇太子と歩いていった。
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