楽園の炎
「どうなってるんだろうね? 気になるなぁ」

「心配はいらんよ。でも俺も、早く兄上の感想が聞きたい」

にやにやと笑う夕星に、再びナスル姫が鋭い目を向ける。

「お兄様、性格が曲がったのではない? 葵王様、このような者に、朱夏を預けてよろしいのかしら」

ぷぅ、と膨れるナスル姫に、葵は笑った。

「似た者同士ですよ。それに、ナスル姫様には悪いですけど、僕も興味がありますね。いえもちろん、悪い印象を受けるとは思ってませんよ。ただ、憂杏は歳が歳ですから・・・・・・驚かれるだろうな、と」

柔らかく言う葵に、ナスル姫はちょっと首を傾げた。
言われてみるまで、歳のことなど、よく考えていなかったようだ。

「あら・・・・・・。憂杏って、そういえば兄上と同じぐらいと思っていたのだけど、考えてみれば、もっと上だわね」

のんびりと言う。
まだ歳を知らなかった頃から『兄上と同じ』と思う時点で、かなり良い線ではある。
ということは、軽く十ぐらい離れていても、姫は特に気にならないということか。

「俺より七つも上だぞ? お前と俺との差の、ちょうど倍だな」

夕星が答えても、ナスル姫は特に驚かない。
むしろ納得したように頷いた。

「ふぅん。道理でしっかりしてるわけよね。安心できるし、信頼できる人だわ」

言ってしまってから、きゃっと呟いてナスル姫は己の頬を両手で包む。
十四歳もの差も、この姫には何の障害でもないようだ。
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