楽園の炎
「やあっ!」

兵士らが目で追うのがやっとの剣戟を巧みにかわしていた夕星の足を、朱夏はかけ声と共に払った。
が、どう察したのか、他の者なら剣を防ぐだけで精一杯のところに足払いをされても、夕星は素早く後ろに飛び退って、朱夏の足を避けた。

それだけでも大したものだが、夕星はさらに、反撃に転ずる。
開いた間合いを一気に詰め、夕星が近づいた。
はっとした朱夏は、剣を引き寄せ、構えたが、夕星は手を伸ばして朱夏の腕を掴んだ。

「!!」

思いも寄らない攻撃に、朱夏が焦っている内に、夕星は朱夏を引き寄せ、ひょいと肩に担ぎ上げた。

「ほら、どうする?」

荷物のように朱夏を肩に乗せたまま、夕星が言う。
夕星の背中側が頭になっているため、表情までは見えないが、声の感じからして、笑っているようだ。

途端に悔しくなり、朱夏は膝で、どかっと夕星の胸を蹴った。

「いてっ!」

「降ろさないと、背中に噛み付くからっ!!」

言いつつも、あまりの剣幕に夕星の腕が少し緩んだ隙を突いて、朱夏は手を伸ばして彼の帯を掴むと、勢いを付けて肩を蹴った。
夕星の帯を軸に、一回転して降りつつ、その勢いを利用して、夕星を投げ飛ばす。

「わっ!!」

これには夕星も驚いたようだ。
叫び声を上げて、宙に浮く。
が、くるりと一回転して、見事に降り立った。
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