楽園の炎
第二十二章
それから七日後の朝。
天幕の近くの井戸で洗濯をしていたナスル姫は、市の向こうのほうが騒がしいのに気づいた。
「どうしたのかしら?」
ナスル姫の呟きに、一緒に洗濯していた女性も手を止めて顔を上げた。
「・・・・・・騒がしいねぇ。おや? 馬が沢山いるようだ。誰か、来なすったのかな」
額に手を翳して、向こうのほうを見ていた女性は、しばらくそのまま様子を見ていたが、よくわからない、とみると、水の中の洗濯物を掬い上げ、絞りながら言った。
「誰も飛んでこないし、まぁ大丈夫だろ」
ふぅん、とナスル姫も、女性に倣って洗濯物を絞る。
だが洗っていた物が大きすぎて、上手く絞れない。
「あはは。旦那がでかいと、大変だねぇ。ほら、そういうのは、こうやるんだ」
ナスル姫の手から洗濯物を取り、女性は器用に水を絞る。
「あんたはほんとに、良いとこのお嬢さんなんだねぇ。にしちゃあ、筋は良いけど。ああ、この前教えたパン、焼いてみたかい?」
「ええ。でも、うまく膨らまなかったわ」
絞った洗濯物を桶に入れながら、ナスル姫は再度騒がしい前方を見た。
何となく、兵士らしき人が、何人か見える。
「へ~、でも、ちゃんと作れたんだね。じゃ、すぐに膨れるようになるさ。憂杏も、良い嫁さん見つけたもんだねぇ」
にかっと笑って、ぽん、と肩を叩く女性に、えへへ、と笑いかけ、ナスル姫は立ち上がった。
そのとき前方から、籠いっぱいの芋を担いだ滋養スープの店の女将が走ってきた。
天幕の近くの井戸で洗濯をしていたナスル姫は、市の向こうのほうが騒がしいのに気づいた。
「どうしたのかしら?」
ナスル姫の呟きに、一緒に洗濯していた女性も手を止めて顔を上げた。
「・・・・・・騒がしいねぇ。おや? 馬が沢山いるようだ。誰か、来なすったのかな」
額に手を翳して、向こうのほうを見ていた女性は、しばらくそのまま様子を見ていたが、よくわからない、とみると、水の中の洗濯物を掬い上げ、絞りながら言った。
「誰も飛んでこないし、まぁ大丈夫だろ」
ふぅん、とナスル姫も、女性に倣って洗濯物を絞る。
だが洗っていた物が大きすぎて、上手く絞れない。
「あはは。旦那がでかいと、大変だねぇ。ほら、そういうのは、こうやるんだ」
ナスル姫の手から洗濯物を取り、女性は器用に水を絞る。
「あんたはほんとに、良いとこのお嬢さんなんだねぇ。にしちゃあ、筋は良いけど。ああ、この前教えたパン、焼いてみたかい?」
「ええ。でも、うまく膨らまなかったわ」
絞った洗濯物を桶に入れながら、ナスル姫は再度騒がしい前方を見た。
何となく、兵士らしき人が、何人か見える。
「へ~、でも、ちゃんと作れたんだね。じゃ、すぐに膨れるようになるさ。憂杏も、良い嫁さん見つけたもんだねぇ」
にかっと笑って、ぽん、と肩を叩く女性に、えへへ、と笑いかけ、ナスル姫は立ち上がった。
そのとき前方から、籠いっぱいの芋を担いだ滋養スープの店の女将が走ってきた。