楽園の炎
「朱夏、どうしたの?」
駆けてきた朱夏は、ナスル姫の前まで来ると、にこりと笑いかけた。
「お元気そうですね。何だか、すっかり商人のような。いえ、でもやっぱり、その辺の女将とは違いますがね」
「もう、すっかり慣れちゃったわ! 気をつけてるから、身体の調子も崩してないのよ」
嬉しそうに言うナスル姫は、以前の姫君然とした長い衣装ではなく、こざっぱりした短いリンズを着ている。
朱夏の衣装と、そう変わらない。
装飾品も格段に少なくなっているが、元々が十分愛らしいので、なくても大して変わらない。
「どうしたんだよ、ユウは? もしかして、今日は皇太子のお供か?」
「うん。ユウも来たがってたんだけどね。ユウはやっぱり、皇子として来るわけにはいかないから、今日はお留守番。皇太子様が市に来るってだけで、ここの人たちには、結構な騒ぎでしょ。この上にユウまで皇子だったってわかったら、大変な騒ぎになるわ」
「まぁな・・・・・・。で、お前が先触れで、俺のところに皇太子を案内するってことかい」
言いながら顔を上げた憂杏は、近づいてくる兵士の一団を見た。
市の人々は、皆興味津々で、店から顔を出している。
一団の中央の皇太子は、そんな人々を眺めながら、時折立ち止まっては傍の店の者に話しかけている。
話しかけられたほうは、恐縮しながらも言葉を返す。
そんなやり取りを繰り返しながら、やがて皇太子は、憂杏の前に来た。
「皇太子殿下。この者が、我が父の、侍女の息子です」
朱夏が、憂杏を紹介する。
今更だが、市の者の前では、皇太子と憂杏は初対面を装う。
憂杏は市の者でも、王宮に繋がりがあるので、そこを強調すれば、皇太子が憂杏のところに来るのも、おかしいことではないのだ。
駆けてきた朱夏は、ナスル姫の前まで来ると、にこりと笑いかけた。
「お元気そうですね。何だか、すっかり商人のような。いえ、でもやっぱり、その辺の女将とは違いますがね」
「もう、すっかり慣れちゃったわ! 気をつけてるから、身体の調子も崩してないのよ」
嬉しそうに言うナスル姫は、以前の姫君然とした長い衣装ではなく、こざっぱりした短いリンズを着ている。
朱夏の衣装と、そう変わらない。
装飾品も格段に少なくなっているが、元々が十分愛らしいので、なくても大して変わらない。
「どうしたんだよ、ユウは? もしかして、今日は皇太子のお供か?」
「うん。ユウも来たがってたんだけどね。ユウはやっぱり、皇子として来るわけにはいかないから、今日はお留守番。皇太子様が市に来るってだけで、ここの人たちには、結構な騒ぎでしょ。この上にユウまで皇子だったってわかったら、大変な騒ぎになるわ」
「まぁな・・・・・・。で、お前が先触れで、俺のところに皇太子を案内するってことかい」
言いながら顔を上げた憂杏は、近づいてくる兵士の一団を見た。
市の人々は、皆興味津々で、店から顔を出している。
一団の中央の皇太子は、そんな人々を眺めながら、時折立ち止まっては傍の店の者に話しかけている。
話しかけられたほうは、恐縮しながらも言葉を返す。
そんなやり取りを繰り返しながら、やがて皇太子は、憂杏の前に来た。
「皇太子殿下。この者が、我が父の、侍女の息子です」
朱夏が、憂杏を紹介する。
今更だが、市の者の前では、皇太子と憂杏は初対面を装う。
憂杏は市の者でも、王宮に繋がりがあるので、そこを強調すれば、皇太子が憂杏のところに来るのも、おかしいことではないのだ。