楽園の炎
「早かったな。じゃ、食事にしよう。皇太子様と、朱夏にもな」

「えへ。兵士らが手伝ってくれたの。でもアシェンが血相変えてわたくしから洗濯物を取り上げるから、困りましたわ。あんなに態度に出されたら、周りにわたくしの正体がバレちゃうじゃない」

ぶつぶつ言いながら、ナスル姫は器にスープを入れる。
憂杏は棚からパンを出し、お茶と共に盆に載せて、皇太子の前に置いた。

「アシェンにも、ちゃんとわたくしのこと、言っておいてくださいよ。わたくしは、商人のところに嫁ぐんですから」

皇太子にスープの器を渡しながら、ナスル姫が言う。

「そうだな。しかし、言ったところで簡単には態度を変えられそうもないけどなぁ。あいつの堅さは、筋金入りだから」

苦笑いしながら、皇太子は器にスプーンを入れた。
ダイナミックに切られた野菜や、小さな肉が、たっぷりと入っている。
良い匂いが、胃を刺激した。

「・・・・・・お前はなかなか、見かけによらず大胆だな。野菜が、でかすぎないか?」

野菜を一つ掬うと、スプーンはいっぱいになる。

「病人じゃないんですから、しっかり噛めたほうが、食べたって気になるじゃないですか。お野菜だって、ここのものは美味しいのですもの。細かくしてしまったら、何の味かわからなくなってしまう。崩れちゃうし」

「相変わらず、凄い上達ですね。美味しいです」

ごろごろと具沢山のスープを食べながら(スープなのに、飲む、というには、がっつりお腹にくるものだった)朱夏はしきりと感心する。
皇太子も、美味そうにスープを平らげた。
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