楽園の炎
「何考えてますのよ。兄上といいお兄様といい、考えすぎですわ。わたくしは常に、憂杏に引っ付いていたいだけです。就寝時なんて、もっとも無防備で隙だらけじゃないですか。そんな状態で長時間いるのを、わたくしが人一倍恐れるのは、兄上もわかってらっしゃるでしょ?」

つん、と澄まして言うナスル姫に、皇太子は苦笑いを浮かべた。

「そういえばそうだな。・・・・・・うむ、ま、確かに。寝るときはいろいろ、考えてしまうしな」

ぽんぽんとナスル姫の頭を叩く。
そして、姫の額に手を当てて、熱を測った。

「うん、熱も出ていないようだな。研修期間は、無事終了しそうかな。そろそろ終えても、大丈夫か?」

え、とナスル姫が顔を上げた。
皇太子は再び憂杏に視線を戻し、目でどうだ? と問う。
憂杏はナスル姫と顔を合わせ、二人揃って頭を下げた。

「はい! お、俺はもう、全く問題ありません!」

「わたくしも! 大丈夫よ、兄上」

頭を下げる二人を、しばらく見つめていた皇太子は、ふと朱夏のほうを振り向いた。

「朱夏姫。どう思う?」

いきなり振られて、朱夏は一瞬きょとんとしたが、考えつつ天幕の中をじっと見回した。
次いで、ナスル姫に視線を戻す。

よくよく観察しても、特にナスル姫は、やつれたわけでもないし、むしろ生き生きしている。
料理も上手だ。
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