楽園の炎
第二十三章
それから一月(ひとつき)ほどは、何ら変わることなく過ぎたが、衣が出来上がった頃には、何となくククルカン勢がばたばたし始めた。
帰国の準備を、本格的に始めたようだ。
「ほらほら朱夏様も、いい加減剣の稽古はほどほどにして、そろそろご自分を磨くことに、お時間を割いてくださいな」
桂枝もアルも、時間があれば朱夏を湯殿で洗い上げたり、丹念に香油を擦りつけたりする。
「ご結婚前に、傷でも作ったらどうするんです。傷だらけの身体だなんて、夕星様も、がっかりなさいますわよ」
「あたしが兵士の稽古をしたがるのは、ユウだって知ってるんだから、今更そんなこと、ないでしょ」
「そういう問題じゃございません。花嫁は、花婿の元に嫁ぐまでに、できる限り己を磨き上げておくものです。今までとは、訳が違うのですからね。妻になる第一夜を、最高の自分で迎えたいと、思いませんか?」
指の先まで丹念に香油を擦りつけるアルに、朱夏は真剣に考える。
が。
「う~ん、よくわからない。あたしがユウの元に行くってのは、わかってるんだけど、ユウの妻だとか、妃だとか・・・・・・。そういう表現になると、途端にわからなくなるのよね~。現実味がないっていうか」
帰国の準備を、本格的に始めたようだ。
「ほらほら朱夏様も、いい加減剣の稽古はほどほどにして、そろそろご自分を磨くことに、お時間を割いてくださいな」
桂枝もアルも、時間があれば朱夏を湯殿で洗い上げたり、丹念に香油を擦りつけたりする。
「ご結婚前に、傷でも作ったらどうするんです。傷だらけの身体だなんて、夕星様も、がっかりなさいますわよ」
「あたしが兵士の稽古をしたがるのは、ユウだって知ってるんだから、今更そんなこと、ないでしょ」
「そういう問題じゃございません。花嫁は、花婿の元に嫁ぐまでに、できる限り己を磨き上げておくものです。今までとは、訳が違うのですからね。妻になる第一夜を、最高の自分で迎えたいと、思いませんか?」
指の先まで丹念に香油を擦りつけるアルに、朱夏は真剣に考える。
が。
「う~ん、よくわからない。あたしがユウの元に行くってのは、わかってるんだけど、ユウの妻だとか、妃だとか・・・・・・。そういう表現になると、途端にわからなくなるのよね~。現実味がないっていうか」