楽園の炎
自分の部屋に入ると、荷造り済みの荷物が目に入る。
といっても、元々から持っているものは、そう多くなく、大部分が新たにあつらえた衣装などで、出来上がって届けられた状態のままなのだが。

朱夏はふと、寝台を整えているアルを見た。

「ね、アルはさ、ずっとあたし付きだったじゃない。唯一のあたしの侍女だし、一緒に行かない?」

え、と、アルが振り向く。

「アルはさ、アルファルドに、ずっといたい?」

少し不安そうに言う朱夏に、アルは微笑んだ。

「そうですね・・・・・・。この国ほど、わたくしのように最も低い身分の者にも住みやすいところは、ないでしょうね。でも・・・・・・朱夏様がおられなかったら、そうでもないかもしれません。朱夏様付きになる前は、まぁいろいろありましたからねぇ」

「そうなの? そういえばアル、あんまり侍女らとつるんでなかったね。あたしも古参の侍女は苦手。偉そうだし」

朱夏は身分柄、異国人の侍女と関わり合うことは、あまりなかったし、異国人が採用される前の侍女は、それなりの家柄の娘なので、朱夏のように暴れん坊な女子には冷たかったのだ。
母代わりの桂枝のような厳しさではなく、野生児の朱夏を、蔑んでいた。

「まぁその辺は、しょうがないですよ。慣れっこですし。でも・・・・・・そうですね~。朱夏様に、ずっと仕えられたら良いですね。仕え甲斐がありますもの」

「どういう意味かしらね」

ちょっと膨れながらも、朱夏は明日にでも、夕星に相談してみようと思いつつ、寝台に潜り込んだ。
< 409 / 811 >

この作品をシェア

pagetop