楽園の炎
「朱夏ぁ~! 久しぶりっ!!」

午前中の稽古を終え、皆と水を飲みながら談笑していた朱夏は、聞こえてきた声に、ふと顔を上げた。
稽古場の入り口から、ナスル姫が走ってくる。

「あ、ナスル姫様・・・・・・あぁぁっ?」

何気なく呟いた朱夏の声が、次第に大きくなる。
ナスル姫は、全く速度を落とすことなく、どんどん近づいてくるのだ。

「ちょ、ちょっとナスル姫様っ。わわっ・・・・・・」

思わず朱夏は、回れ右して走り出した。

「あらっ朱夏! 何故逃げるのよーっ」

ナスル姫も驚いて、さらに速度を上げようとする。
が、そんな二人の間に、夕星がひょいと割り込んだ。

ナスル姫は夕星を見、やはり速度はそのままに、彼に飛び込んでいった。

「お兄様っ。お久しぶり!!」

ど~ん! というように勢い良く夕星の胸に飛び込み、ナスル姫は叫んだ。
あまりの勢いに、周りの兵士らが引いたほどだが、夕星は慣れたもののように、軽く受け止める。

「元気そうだな」

「ええっ! この通りよ!」

夕星に抱き上げられたまま、ナスル姫はガッツポーズをする。
朱夏はやっと、そろそろと夕星の傍に戻った。
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