楽園の炎
「じゃ、朱夏が俺のところに来りゃいいじゃないか。で、憂杏が宝瓶宮の朱夏の部屋に泊まる、と」

に、と笑って、朱夏の肩を抱く。
朱夏は眉間に皺を寄せて、己の肩を抱く夕星の手の甲を、ぎゅっと抓った。

「そうだ。外宮の朱夏の部屋。あそこはまだ、そのままか?」

「あ、うん。そっか、あそこがあったわね」

夕星を押しのけ、朱夏は憂杏と扉に向かった。
ナスル姫が、慌てて追ってくる。

「そういえば、そろそろ兵舎の夕食だな。ご相伴にあずかるか。お姫さんも、行こうぜ」

憂杏がナスル姫の手を取って、歩いていく。
やれやれ、と朱夏は、その後ろ姿を眺めた。

「全く、すっかり夫婦だな。ちょいと、羨ましい」

ぼそ、と聞こえた声に振り向けば、少し後ろに夕星が立って、同じように憂杏とナスル姫を眺めていた。
夕星はちら、と朱夏を見ると、ゆっくりと近づいて朱夏のすぐ傍に立った。

「何となく、皆ナスルのほうに気を取られがちだが、俺たちだって、婚約者同士なんだぜ」

「う、うん・・・・・・」

ちょっと二人になる機会がなかったら、いざ二人になると、妙に照れる。
朱夏はもじもじと、曖昧に呟いた。
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