楽園の炎
「ナスルが馬上を、あんなに怖がらないなんてな。さすが憂杏」
怖がるどころか、ナスル姫は憂杏の前で、きゃっきゃっとはしゃいでいる。
あれ? と朱夏は、辺りを見渡した。
「ねぇ、ナスル姫様の輿は?」
馬に乗れないのなら、ナスル姫はアルファルドまで、陸路は輿に乗ってきたはずだ。
が、今ナスル姫は、憂杏の馬に乗っている。
ふと気づけば、少し離れたところに、ナスル姫の輿と思われるものが、ついてきていた。
「輿だけ?」
「いや、ナスルと憂杏の荷物だよ」
いつも憂杏は、自分の軍馬に荷物も積んで旅するのだが、今回はナスル姫を連れている。
強く大きな軍馬とはいえ、人間二人と天幕などの荷物は、運べないだろう。
ちょうどナスル姫の輿が空いていたので、それに荷物を載せるようにしたらしい。
「普通に、輿にナスル姫様が乗って、憂杏が旅に出るのと同じスタイルでもいいのにね」
「それはホレ、ナスルが嫌なんだろうさ。ラーダもそう言ったがね。自分はもう姫君じゃないから、輿なんて乗らないんだと。ま、もっともな意見とも取れるが、もっと単純に、憂杏と一緒がいいんだろうさ」
確かに、商人の旅に慣れるためにも、馬での移動のほうがいいが、と言い、夕星は進行方向を見た。
今回の軍は、市は通らない。
これだけの大軍が市を通過するのは大変だし、大軍が通り過ぎるまで、市の人々も足を止められる。
混乱を避けるためにも、できるだけ人の多いところは、避けて通るのだ。
怖がるどころか、ナスル姫は憂杏の前で、きゃっきゃっとはしゃいでいる。
あれ? と朱夏は、辺りを見渡した。
「ねぇ、ナスル姫様の輿は?」
馬に乗れないのなら、ナスル姫はアルファルドまで、陸路は輿に乗ってきたはずだ。
が、今ナスル姫は、憂杏の馬に乗っている。
ふと気づけば、少し離れたところに、ナスル姫の輿と思われるものが、ついてきていた。
「輿だけ?」
「いや、ナスルと憂杏の荷物だよ」
いつも憂杏は、自分の軍馬に荷物も積んで旅するのだが、今回はナスル姫を連れている。
強く大きな軍馬とはいえ、人間二人と天幕などの荷物は、運べないだろう。
ちょうどナスル姫の輿が空いていたので、それに荷物を載せるようにしたらしい。
「普通に、輿にナスル姫様が乗って、憂杏が旅に出るのと同じスタイルでもいいのにね」
「それはホレ、ナスルが嫌なんだろうさ。ラーダもそう言ったがね。自分はもう姫君じゃないから、輿なんて乗らないんだと。ま、もっともな意見とも取れるが、もっと単純に、憂杏と一緒がいいんだろうさ」
確かに、商人の旅に慣れるためにも、馬での移動のほうがいいが、と言い、夕星は進行方向を見た。
今回の軍は、市は通らない。
これだけの大軍が市を通過するのは大変だし、大軍が通り過ぎるまで、市の人々も足を止められる。
混乱を避けるためにも、できるだけ人の多いところは、避けて通るのだ。