楽園の炎
「人を乗せて走るのは、そんなに疲れるものかな?」
小首を傾げて言う朱夏に、アルはふるふると首を振った。
「いえ多分、女子(おなご)を乗せるのは、初めてなんじゃないでしょうか。乗るまでは、こちらもいっそのこと、遠慮しようかと思うほど、緊張してらしたし」
ちょっと考えた後、朱夏はぷっと吹き出した。
昨夜のアシェンの様子から、アルを同じ馬に乗せるまでの彼の行動が、手に取るようにわかる。
「うぷぷ。でもさ、アルが断っても、きっとアシェン様は譲らないわよ。何と言っても、ユウ自ら頼まれたんだしね」
本人が断ったからといって、これ幸いというわけにはいかない。
己が仕える皇族からの頼みなのだし、苦手だからといって、他の者に頼むというような柔軟性があるようには見えない。
自分が主から頼まれたことは、何が何でも自分がこなさなければ、という、堅い頭なのだろう。
「最後のほうは、さすがに慣れてきたようでしたけど、初めはほんとに、周りの兵士らも、ちょっと笑いを堪えてましたから、よっぽど身体かお顔が、強張ってたんじゃないでしょうか」
「見てみたかったわ。アルも、恥ずかしかったでしょうね」
「わたくしも、ちょっと見てみたかったのですけど。ただでさえ緊張されているのに、この上わたくしが振り向いたりしたら、どうなる事やら、と思って我慢しました」
二人はそれぞれ、少し邪悪な笑みで、笑いあった。
小首を傾げて言う朱夏に、アルはふるふると首を振った。
「いえ多分、女子(おなご)を乗せるのは、初めてなんじゃないでしょうか。乗るまでは、こちらもいっそのこと、遠慮しようかと思うほど、緊張してらしたし」
ちょっと考えた後、朱夏はぷっと吹き出した。
昨夜のアシェンの様子から、アルを同じ馬に乗せるまでの彼の行動が、手に取るようにわかる。
「うぷぷ。でもさ、アルが断っても、きっとアシェン様は譲らないわよ。何と言っても、ユウ自ら頼まれたんだしね」
本人が断ったからといって、これ幸いというわけにはいかない。
己が仕える皇族からの頼みなのだし、苦手だからといって、他の者に頼むというような柔軟性があるようには見えない。
自分が主から頼まれたことは、何が何でも自分がこなさなければ、という、堅い頭なのだろう。
「最後のほうは、さすがに慣れてきたようでしたけど、初めはほんとに、周りの兵士らも、ちょっと笑いを堪えてましたから、よっぽど身体かお顔が、強張ってたんじゃないでしょうか」
「見てみたかったわ。アルも、恥ずかしかったでしょうね」
「わたくしも、ちょっと見てみたかったのですけど。ただでさえ緊張されているのに、この上わたくしが振り向いたりしたら、どうなる事やら、と思って我慢しました」
二人はそれぞれ、少し邪悪な笑みで、笑いあった。