楽園の炎
「じゃ、今日の移動も大丈夫か。しんどくなったら、すぐ言えよ」

そう言って、夕星は寝台を降り、部屋から出て行く。
入れ替わりに、アルが入ってきた。
寝台の上に座った朱夏を見て、少し驚いたように、ぽかんとする。

「・・・・・・本当に、全快されたのですね・・・・・・。あんなにお熱も高かったのに」

「凄い効き目だとは思うけど。あれだけ不味かったんだもの。これぐらい効いて、当たり前よ」

「確かに。よくあのように恐ろしげな薬、我慢して飲み干されましたね」

全く、と思いながら、アルの持ってきた盆の上に目をやった朱夏が、ひく、と顔を引き攣らせた。

「ア、アルっ! ま、またあの薬、飲まないといけないの?」

盆の上には、朝餉と共に、昨日憂杏に渡されたような、小さな包みがあったのだ。

「昨日はまだ、何かぼぅっとしてたから飲めたけど、今は頭、はっきりしてるから、とてもあんな強烈な薬、飲めないわよぅっ」

「あ、違いますよ。昨日のは、飲んだら眠くなってしまうので、寝る前に飲むものだそうで。今日のは全然、軽いみたいですよ。これは甘味のある薬草も入ってますし、大丈夫ですよ」

くんくん、と匂いを嗅ぎ、アルが言う。
アルも薬草には詳しい。
朱夏は朝餉を食べつつ、うんざりと薬の包みを見た。
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