楽園の炎
「ご自分と、比べられるからですよ。生粋の姫でなくても、それなりの貴族の娘なら、まず剣術なんてしませんよ。朱夏様だって、多少の擦り傷ぐらいで、肌はお綺麗ですわよ」

何と言っても、わたくしが磨き上げているのですから、と胸を張るアルに、そうかなぁ、と朱夏は己の腕などを眺めてみる。

「まぁナスル姫様も、あたしの肌は白くて羨ましいって、仰ってくださったけど」

「ククルカンの民は、皆色が黒いですものね。男性は格好良いですけど、女子(おなご)からしたら、嫌かもしれませんわね」

「あれ、アルは色黒の人が好きなの? でもナスル姫様も、健康的で良いと思うけどな」

「そうですわね。考えてみれば、ナスル姫様のあの外見で、抜けるように白い肌とかだったら、もうそれこそ人間じゃありませんわよ。神々しすぎます」

今でも完璧だと思うほどの外見なのに、この上真っ白な肌とかだったら、もう本当に非の打ち所がない。
浅黒い肌でも、全く気にならない程なのに。

「さ、とにかく着替えなければ。う~ん、そんなに気になるのでしたら、こちらの、ナスル姫様にしては珍しい、布の少ないやつにしましょう」

アルは言いながら、散乱した衣装の中から、比較的朱夏の着ているものに近いものを引っ張り出し、手早く朱夏を着替えさせた。
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