楽園の炎
「面白い奴だなぁ~。ああいう奴は、思わぬところに反応するんだな」

「?」

「アシェンに甘えろって、俺が言ったと思ったようだな」

「? アルに?」

「そう」

じっと、朱夏はアシェンを見た。
アルの後ろに乗って、ぴんと不自然なほど、背筋を伸ばしている。

「・・・・・・最初の夜の、あたしみたいね」

思わず出た呟きに、夕星が声を上げて笑った。
呟いてから、朱夏は、あれ、と一つの思いに行き当たる。

「ね、じゃあアシェン様は、アルのことが好きなの?」

ん? と夕星が、朱夏を覗き込む。

「だってさ、あたしがあんなに堅くなってたのは、ユウのことが・・・・・・」

何の気なしに喋っていた朱夏だが、また恥ずかしいことを口走りそうになって、ぐ、と言葉を呑み込んだ。
あの夜、朱夏があんなに緊張したのは、夕星のことが好きだからだ。

少しの沈黙の後、後ろから夕星がぼそりと言った。

「・・・・・・何だって?」

「・・・・・・」

だんまりを続ける朱夏を、ずいっと覗き込む。

「俺が、何だ?」

「ちょ、ちょっと。そんなに乗り出したら、危ないよ」

慌てる朱夏にも構わず、夕星は執拗に質問を続ける。

「話を途中でやめるなよ。んん?」
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