楽園の炎
「いえね。もしかしたらアシェン様は、アルのことを結構気に入ってるかも、と思ったからさ」

「? まさか。あんなに気分が悪いのに、わたくしがいたら、横にもならない人ですのに?」

あり得ない、というように、アルは肩を竦める。
朱夏は苦笑いをこぼした。

「それはさぁ。ほんとに女性に慣れてないからだと思うわよ。アルの前では、きちっとしていたい、と思ってるのかもしれないし。それにさ、アル、コアトルの宮殿で、アシェン様と散歩してなかった?」

「ああ。散歩というか、わたくしが一人でぼんやりしていたから、また気を遣ってくださったんじゃないですか? ほら、わたくしの面倒を見るよう、夕星様に言われたから」

そう言われると、否定できない。
元々色恋沙汰の苦手な朱夏は、ややこしくなってくると、途端に面倒になってしまう。

「・・・・・・わかんないわね~。ま、アルの趣味もわかんないから、二人が合うかどうかもわかんないけどさ」

「朱夏様は、わたくしとアシェン様を、くっつけようとしておられるのですか?」

「・・・・・・アルさえ良ければ、よ。無理矢理大事なアルをあげるようなことは、しないわよ」

「わたくしが良くても、アシェン様のあの態度では、とてもとても無理でしょう」

前途多難だね、と、二人は笑いあった。
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