楽園の炎
「うにゃ~っ! 寒いぃ~~」

夜が更けるほどに、寒さは増すようだ。
朱夏は寝台の上で、毛布にくるまり泣き言を言う。

「大袈裟ですわよ。誰も朱夏様ほど、寒がっておりませんわよ」

アルが持ってきた蜂蜜湯を受け取り、朱夏は器を頬に当てる。
身体は毛布にくるまったままだ。

「葵王様だって、普通にしておりましたよ。厚めの上着は、着てらしたけど」

「おかしいわよ。あたしはこんなに寒いのに」

はふはふと蜂蜜湯を飲みながら言う朱夏の額に、アルが手を当てる。
確かに雨用の外套なしに、雨に打たれたのは朱夏だけだ。
また風邪を引いたのかもしれない。

「お熱は・・・・・・ないようですわね」

「大丈夫よ。暖かくして寝れば、治ると思う。疲れもあると思うし」

またあの憂杏の薬を飲まされてはたまらない。
朱夏は、ぐいっと蜂蜜湯を飲み干すと、ごそごそと布団に潜り込んだ。

「ではわたくしは、お隣の部屋にラーダ様とおりますから、何かあったらお呼びください」

「うん。おやすみ」
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