楽園の炎
「まぁまぁ。お兄様はあれでも、この国の宰相ですから。お留守の間に、お仕事もたんまり溜まってますでしょうし。それに、朱夏はガードが堅いでしょ。セドナがついてるんでしょ?」
「あ、ええ。お部屋にいるときは、常に目の届く範囲にいてくれますね」
「それが、お兄様には気詰まりなのよ」
そうしたのは夕星なのだが。
が、おそらく育ての親であるセドナには、さすがの夕星も頭が上がらないのだろう。
人一倍信頼はしているが、己をも撃退させる力を持っているセドナが、常に朱夏の傍に控えているとなると、朱夏の元を訪れるのも勇気がいるのだ。
「お兄様はね」
ナスル姫が、目尻を下げて、ぐっと声を落とした。
「朱夏といちゃいちゃしたいから。セドナの前では、できないでしょ」
頬を染めて、ちろりと目だけを動かす朱夏を見、ナスル姫は、さらにくふふ、と含み笑いをしつつ声を落とす。
「会ってしまったら、ご自分を抑えられなくなるんじゃない?」
「ななな、何てこと言うんですかっ」
真っ赤になってのけ反る朱夏に、ナスル姫は、ちっちっと指を振った。
「もう。敬語禁止だって」
にこにこと言うナスル姫の後ろから、うきゃきゃきゃっというニオベ姫の笑い声が響いてくる。
憂杏に振り回されて、ニオベ姫が楽しそうにはしゃいでいるのだ。
「ああ、何か、ナスル様の将来を見ているみたい」
ぼんやりと、憂杏にじゃれるニオベ姫を眺め、朱夏はぽつりと呟いた。
「あ、ええ。お部屋にいるときは、常に目の届く範囲にいてくれますね」
「それが、お兄様には気詰まりなのよ」
そうしたのは夕星なのだが。
が、おそらく育ての親であるセドナには、さすがの夕星も頭が上がらないのだろう。
人一倍信頼はしているが、己をも撃退させる力を持っているセドナが、常に朱夏の傍に控えているとなると、朱夏の元を訪れるのも勇気がいるのだ。
「お兄様はね」
ナスル姫が、目尻を下げて、ぐっと声を落とした。
「朱夏といちゃいちゃしたいから。セドナの前では、できないでしょ」
頬を染めて、ちろりと目だけを動かす朱夏を見、ナスル姫は、さらにくふふ、と含み笑いをしつつ声を落とす。
「会ってしまったら、ご自分を抑えられなくなるんじゃない?」
「ななな、何てこと言うんですかっ」
真っ赤になってのけ反る朱夏に、ナスル姫は、ちっちっと指を振った。
「もう。敬語禁止だって」
にこにこと言うナスル姫の後ろから、うきゃきゃきゃっというニオベ姫の笑い声が響いてくる。
憂杏に振り回されて、ニオベ姫が楽しそうにはしゃいでいるのだ。
「ああ、何か、ナスル様の将来を見ているみたい」
ぼんやりと、憂杏にじゃれるニオベ姫を眺め、朱夏はぽつりと呟いた。