楽園の炎
「ニオベ、俺が朱夏を放っておくわけないだろ? むしろ、遠ざけられてたのは、俺のほうなんだぜ?」

「そ、そうなんだ。おじちゃまも、寂しかったのね。ごめんなさい」

素直にニオベ姫は、ぺこりと頭を下げる。
何とまぁ、純粋な姫君なのか。
子供はそんなものなのかな、と思いながらも、やはり可愛い、と思ってしまう。

「可愛いお姫様だね。確か、皇太子様のお嬢さん・・・・・・ニオベ様ですね」

葵が、夕星の後ろから、ニオベ姫に声をかけた。
今度はニオベ姫が、ぽかんと呆気に取られたような顔で、葵を見る。

「ニオベ様、これが葵ですよ」

朱夏の言葉に、はっと我に返り、ニオベ姫は初めに朱夏にしたように、スカートの裾を摘んでお辞儀した。

「ニ、ニオベと申しますっ」

朱夏にしたときより、数段堅い。
どうしたのかと思っていると、ニオベ姫は、ささっと朱夏の後ろに隠れ、おずおずと恥ずかしそうに葵を見上げた。

「何恥ずかしがってる。ははぁ、一丁前に、色気づいてるな」

にやりと笑う夕星に、ニオベ姫は真っ赤になって殴りかかった。

「もおぉっ! おじちゃま、デリカシーがなさすぎよぅっ! 黙っててよっ」

小さな拳でぽかぽかと殴るニオベ姫を軽くかわしながら、夕星はけらけら笑う。
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