楽園の炎
「もっとしっかりしないと、立派な王になれないって、ずっと言ってたくせに」
「そうだけどさ。何か、いざ葵がそれなりに立派になったら、昔の葵じゃないみたいで」
俯いて言う朱夏に、葵は、あはは、と空を仰いで笑い声を上げた。
ぽんと朱夏の背中を叩く。
「そりゃあそうだよ。いつまでも泣きべそかいてるわけにもいかないだろ? じゃないと、朱夏にしごかれた意味がないじゃないか」
「あ、あたしがしごいたわけじゃないでしょ? 隊長だよ」
顔を上げた朱夏の前で、葵は大きく手を振った。
にやりと笑い、前を向く。
「隊長は、僕が泣くまではしごかないよ。そもそも実際僕の剣術指南役は朱夏だったんだから、僕の相手はいっつも朱夏だったじゃないか。他の兵士がはらはらするほど、朱夏は容赦なく打ち込んでくるし、僕が恐れをなして降参って言っても、早すぎたらやめてくれなかったじゃない。挙げ句には、根性無しって怒鳴ってどっかに行っちゃうし」
朱夏は何か言い返そうとして口を開いたが、反論できない。
葵の言うとおりである。
結局朱夏は、ぽりぽりと頭を掻いて、口を閉ざした。
「ま、そのお陰で、僕もそれなりに強くなれたわけだけどね。そういえば、僕もいっつも朱夏を捜してたから、ナスル姫様みたいに、人を見つけるのが上手いかもしれないな」
「良いこともあったじゃない。でもそう、泣きながらあたしを捜し回ってた葵が、このククルカン帝国の政治に参加するようになるなんてさ。ナスル様とかと会わなかったら、アルファルドから出ようなんて、思わなかったんじゃない?」
「そうだけどさ。何か、いざ葵がそれなりに立派になったら、昔の葵じゃないみたいで」
俯いて言う朱夏に、葵は、あはは、と空を仰いで笑い声を上げた。
ぽんと朱夏の背中を叩く。
「そりゃあそうだよ。いつまでも泣きべそかいてるわけにもいかないだろ? じゃないと、朱夏にしごかれた意味がないじゃないか」
「あ、あたしがしごいたわけじゃないでしょ? 隊長だよ」
顔を上げた朱夏の前で、葵は大きく手を振った。
にやりと笑い、前を向く。
「隊長は、僕が泣くまではしごかないよ。そもそも実際僕の剣術指南役は朱夏だったんだから、僕の相手はいっつも朱夏だったじゃないか。他の兵士がはらはらするほど、朱夏は容赦なく打ち込んでくるし、僕が恐れをなして降参って言っても、早すぎたらやめてくれなかったじゃない。挙げ句には、根性無しって怒鳴ってどっかに行っちゃうし」
朱夏は何か言い返そうとして口を開いたが、反論できない。
葵の言うとおりである。
結局朱夏は、ぽりぽりと頭を掻いて、口を閉ざした。
「ま、そのお陰で、僕もそれなりに強くなれたわけだけどね。そういえば、僕もいっつも朱夏を捜してたから、ナスル姫様みたいに、人を見つけるのが上手いかもしれないな」
「良いこともあったじゃない。でもそう、泣きながらあたしを捜し回ってた葵が、このククルカン帝国の政治に参加するようになるなんてさ。ナスル様とかと会わなかったら、アルファルドから出ようなんて、思わなかったんじゃない?」