楽園の炎
「・・・・・・そうか。そうかもね」

葵の言うとおりだと、朱夏も思う。

そうであった場合、無理矢理側室にされた朱夏はもちろん、ナスル姫だって、葵を慕っていても、葵が側室である朱夏を気にかければ気分は良くない。

そんなときに憂杏に会ったら、今よりも強く惹きつけられるだろう。
だが、姫はすでに、葵の正室である。

誰も、どうにもできない立場になってから、苦しむことになるのだ。

「だから、これで良かったんだと思うよ。・・・・・・凄いよね。夕星様が、全てを良い方向に持って行ってくれた」

全てを良い方向へ。
皆が幸せになるように。

「でも・・・・・・」

躊躇いがちに、朱夏は葵を見上げる。
葵はどうなのだろう。
朱夏も、ナスル姫も、手元には残らなかった。

でもそれを、朱夏が口にするには勇気がいる。
黙ってしまった朱夏に、葵は、ふぅ、と息をつく。

「朱夏はさ、やっぱりちょっと、僕のことを負い目に感じてるよね」

「・・・・・・」

否定できず、朱夏は葵の横顔を見つめる。
葵の顔をまじまじと見るのは、久しぶりだ。
こんなに綺麗な顔だったろうか。
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