楽園の炎
「あ、ああ~。そ、そうだったんだ。どうりで・・・・・・」

ぽりぽりと頭を掻き、改めて部屋に溢れかえる布を見る。
朱夏にしてみれば、今ある布は、ただの布なんだか作りかけなのかすらわからない。

「それにしても、一口に白といっても、いろいろあるものねぇ」

光沢のあるものや、繊細なレースが重なったようなものまで、多種多様だ。

「白って、今までも結構着てきたと思うけど。やっぱり違うわね」

「着てきたといっても、知れてるじゃありませんか。朱夏様のリンズは、リンズの基本形でしかないのですから」

アルが呆れたように言う。

「リンズの基本形と仰いますと、一枚布を巻き付けるだけ、ですか?」

セドナの言葉に、アルはこっくりと頷いたが、朱夏は慌てて否定した。

「ちょっと。いくら何でも、それは言い過ぎでしょっ! ちゃんとその上に、もう一枚重ねてたわよ」

噛み付く朱夏を、アルはしれっと、ああ、そうでしたわね、とあしらう。
少し考えていたセドナだったが、不意に良いことを思いついたように、ぽんと手を打った。

「そうだわ。ではお式の後の夜着は、リンズのようなものにしましょう。ふわっとした、薄い一枚布で、腰で一つ縛るぐらいの・・・・・・胸元辺りのほうが、よろしいかしら」

「それはいいかもしれませんね。そうですね・・・・・・あまり低い位置よりは、少し上のほうが、いいかもしれません」

アルはすぐに合点がいったらしく、セドナと一緒に布を選び始める。
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