楽園の炎
「夜着に、何でそんな工夫するの? 確かにリンズは、一枚だけだったら楽だから、夜着にもいいけどさ」

楽しそうに布を選ぶ二人を眺めながら、朱夏が不思議そうに問う。
セドナは、あら? という顔をし、アルはまた、呆れたような顔を向けた。

「もう、朱夏様は。どんだけ鈍感なんですか。お式の後といったら、お二人が結婚した、初めての夜じゃありませんか」

ぽかんとする朱夏に、セドナが透けそうに薄く柔らかい布を被せ、アルが両手で朱夏の胸の下を押さえた。

「やはり、お胸のちょっと下辺りのほうが、女性らしさが出て良いかもしれませんね」

「そうですね。ここで縛れば、お胸が大きく見えますし。ちょっと、小さいですものね」

下から胸を持ち上げながら、アルがにやりと笑う。
朱夏は、ぷぅ、と頬を膨らませた。

「そんなの、後は寝るだけなんだから、どうだっていいでしょ」

ぷん、とそっぽを向く朱夏に、アルは微妙な顔になる。
セドナはまさか朱夏が何も知らないとは思っていないようで、薄衣の丈を合わせたりしている。

「さ、ではこれぐらいでいいでしょう。留めるのはお胸の下だけで、後はすとんとこれぐらいに。あまり後ろまであると、いざというとき邪魔になりますので、合わせの部分もこれぐらいにしましょうね」

「え? これだけ? 留めるのがここだけなのに、合わせも背中のほうまでないのは、ちょっと恥ずかしくない? 布も薄いし・・・・・・」

寝てる間に、ちょっと足を動かしたらめくれそう、と言う朱夏に、セドナは初めて違和感を覚えたようだ。
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