楽園の炎
「もおぉ~。朱夏様、大丈夫なんですか? いざというときになって、夕星様を蹴飛ばしたりしないでくださいよ」

「け、蹴飛ばされるようなこと、するほうが悪いじゃない」

「そうでなくて。多分ですけど、朱夏様的には、凄くびっくりするようなことをされると思うんですよ」

「ええええっ?」

「でもそれは、何も朱夏様を驚かそうとか、夕星様の意地悪とかではないんですよ」

「・・・・・・」

「言いましたでしょ。何をされても、夕星様をお好きなら、全て受け入れて差し上げるんですよ」

ごくりと唾を飲み込む朱夏に、ふとアルは首を傾げた。
ちらりとセドナを見る。

「失礼ですが、夕星様には、妙な性癖などは、ありませんよね?」

ぶっと吹き出しながらも、セドナは束の間真剣に考えてから口を開いた。

「ないと思いますよ。廓(くるわ)でも、特に妙な噂は立ちませんでしたし。廓自体も、おかしなところではありませんでした」

セドナの言葉に、あら、とアルの目が少し鋭くなる。

「夕星様は、廓などに出入りしていたのですか?」

疎い朱夏でも、廓というところがどういうところかは知っている。
具体的に何をするのかは、よく知らないが。
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