楽園の炎
少し身を起こしたアリンダが、乱暴に朱夏に唇を押しつけた。
無理矢理に、舌をねじ込んでくる。

息が詰まり、朱夏は苦しさに涙を浮かべた。
それがまた、アリンダの欲望に火を付ける。

「小娘のくせに、いい顔をするではないか。どれ、もっと泣かせてみたくなるのぅ」

唇を離し、アリンダは朱夏の足を持ち上げた。
今まで朱夏が大人しいので、アリンダからしたら、朱夏はすっかり怯えて身体が動かないのだと思ったらしい。

油断し、朱夏の両手を拘束していた手も離して、足を掴んだのだ。

その瞬間、勢い良く起き上がった朱夏は、そのままの勢いで、アリンダの頭に頭突きを喰らわせた。

「っっ!!」

いきなりの反撃に、アリンダの目は大きく見開かれる。
打ち付けられた額を押さえ、少し後ろにのけ反ったが、頭突きは打つほうにもダメージがある。
あまり強くは打てなかったため、すぐにアリンダの手が伸びる。

「くっ・・・・・・この・・・・・・」

額を片手で押さえ、伸ばした手で朱夏の肩を掴む。
まさに容赦ない力に、肩の骨が悲鳴を上げるほどだ。

「ううっ・・・・・・」

再び押し倒されそうになり、朱夏は狙いを定めて、膝をアリンダの脇腹に打ち込んだ。
まさか姫君から蹴りが飛んでくるなどと思わなかったアリンダは、もろに蹴りを喰らって寝台に倒れ込む。

その隙に立ち上がろうとするが、アリンダだって武人である。
素早く上体を起こすと、怒りに任せて朱夏を張り倒した。
手の平でなく、手の甲で打たれたため、衝撃に口の端が切れる。
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