楽園の炎
「あ、やべ。・・・・・・まぁいいや。ほら、これ以上無駄に痛い思いは、したくないだろう? 所詮女なんて、そんなもんだ。力じゃ敵わないんだからな」

寝台に蹲った朱夏は、口の端から流れる血を密かに舐めた。

以前、夕星にも同じ事を言われた。
力では男に敵わない。

だが。
ぎゅっと、首から下がった守り刀を握りしめる。

それ故に、夕星は朱夏の相手をする中で、人の身体の急所や、鍛えようのない弱点などを教えたのだ。

「さて。威勢が良いのも悪くないが、あんまり手間をかけると、容赦しないぜ」

再度朱夏の肩を掴むと、アリンダは乱暴に朱夏を転がし、自分の腰帯を解いて、手早く朱夏の両手首を、胸の前で縛った。

「色が白いからな、いたぶり甲斐がある。式の日までに消えないような跡を、身体中につけてやろう」

そう言って、力任せに朱夏の身体をまさぐり出す。

---ほんとにこの皇子は、皇家の人間とは思えないっ!---

嫌悪に耐えながら、朱夏は懸命に気を落ち着け、下方にうごめくアリンダの頭を睨んだ。
葵に襲われたときとも違う、ただただ気持ち悪い感触に、身体が震える。

---落ち着いて、落ち着いて---

必死で息を整え、隙を窺う。
ちらりと横を窺うと、レダは二人を倒したようだ。
が、三人の兵士に組み敷かれている。

---こいつらっ・・・・・・---

主が主なら、やはり仕える兵士も知れたもの。
同じような蛮行に及ぼうとしている。
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